何ともなしに上陸中。ログがたまるまでのわずかなバカンス。
 特に予定も何もない。
 約束もしていない。
 だがゾロとサンジは二人で歩いていた。
 心地いい風と気候。
 砂浜を見渡せるホテルに入った。
 食事をし、風呂に入ると何となくやっぱりセックスになだれ込む。
 少なからず湯で火照った体を重ねると、熱と鼓動が直に伝わってくる。体温で体を温められるその感覚に、サンジは溺れそうになった。
 「ドラムでの寒さが嘘みたいだ…」
 「そうだな」
 ゾロは体を弄るのに忙しいらしく、素っ気なく返事をする。熱を追う感覚が思考を麻痺させていき、いつしかその先の感覚を求めて体は揺れる。
 「ゾロ……」
 名前を口にするのも必死になる。羞恥と快感がまざり、恥部を晒け出す頃にはゾロにも余裕はないはず。
 「ん……っ」
 膝を抱えられて股間がゾロの目に晒される。だが何をする訳でもなく、ゾロは動きを止めていた。
 「な…に見てんだよ!」
 「テメーは解っちゃいねぇんだな」
 「?何言ってんだ、ヤらねぇなら足開かせんな」
 体を翻し、気が削がれたと煙草に手を伸ばす。背中を見せる格好になり、溜息をつくと突然両腕を制止された。
 「な……?」
 組み敷かれる形で、後ろに回された片腕は力一杯握られていた。やわらかいベッドが軋む。
 「オイオイ…いきなり乱暴プレイか?」
 「お前…自分は死んでもいいと思ったんだろう」
 「!」
 ドラムで怪我した背中。傷跡は生々しく、多分痕は残るだろう。
 「そうなんだろう?」
 「………」
 反論出来なかった。今は生きてて良かったと思うけど、多分あの時は死んでもいいと思った。
 初めて誰かの為に何か出来たと思ったから。
 「だったら…何だってんだよ!」
 「………」
 重い沈黙が続いた。するりと腕を解放されたかと思うと、背中ごと抱きしめられてサンジは身を竦めた。
 「ゾ…ロ…?」
 「心配させたとか…思わねぇのかよ」
 サンジはどきりとした。ゾロの思わぬ本音が、如何に自分を大事に思っていたかをようやく知る事が出来た。
 自分の事しか考えてなかった。あの時はナミさんとルフィが無事ならそれでいいって思った。自分を心配するなんて微塵も思わなかった。
 そう考えると、ゾロの気持ちを無視していた自分が恥ずかしくなってしまう。そろりと体を反転させ、その男の顔を見つめた。
 「ゾ…」
 「何か言う事があるだろう」
 正面から真っ直ぐ聞いてくるゾロに、サンジは答えた。
 「…ごめん」
 こうやっていつも言い聞かせられてしまう自分を、サンジは子供だと実感する。
 そんな自分を心配していたというゾロには本当に敵わない。
 力でも、精神面でも。
 成り行きで始まった関係でも、今は真っ直ぐにその気持ちを伝えてくるから、つい甘えては軽口ばかり叩いてしまうのだ。
 「サンキュ…」
 きゅっと抱きつく体に、ゾロは答える様に唇を落とし始める。
 耳朶から首筋、舌が鎖骨をなぞり桃色の突起に達した時には、サンジの息は乱れている。
 「ん、あぁ…」
 しつこい位に胸を弄られ、サンジの天を仰ぐ己がぴくぴくと撥ねて透明な液体を軽く散らす。
 「ゾ…ロ…もぅ」
 「まだだ」
 ゾロ自身も既にはち切れそうになっているが、サンジへの愛撫を止めようとはしない。サンジの下半身はじっとりと湿って、どうにかなってしまいそう。
 「や…っ何…で」
 「お仕置きだ」
 「え……?」
 続けられる愛撫に身を任せ、サンジはゾロの言うお仕置きの意味を考えてみるが、考えた所ですぐに思い出せる事は無い。
 「どういう…」
 「…自分で考えろ」
 「あ!」
 蕾に湿った指をあてがわれる。既にしっとりと濡れている其処はすんなりとそれを受け入れ、飲み込む。
 「……っ!」
 びくびくと体を揺らし、サンジは一度目の射精をした。
 赤みを増した腹に広がる滴は淫靡で、涙を流す顔によく似合っていた。
 「入れるぞ」
 容赦なく侵入してくる異物は、サンジの蕾を広げる必要もなく奥まで進んでゆく。
 「あ…ああ……」
 目を見開いてその感覚に身を委ねる。突き上げられる雄は締め付けを物ともせず、その全てを埋め込んだ。
 「う…あ」
 「熱いな…」
 サンジは顔を赤くして声を漏らす。
 「テメーのが…熱い」
 ぞくりと迫るその仕草に、ゾロは溜まらなく雄を律動させる。背中の傷に障らないよう、腰を浮かせてはサンジのイイ所を攻めては啼かす。
 「あ、ゾロっ…!」
 早々に二度目の到達を促し、よがる体をゾロは眺める。
 バカンスはまだ数日ある。それまでにサンジはお仕置きの意味に気付くだろうか?
 「気付けよ…」
 その声はサンジには届かない。
 怪我した事に怒っていた事は、恥ずかしいから自分からは言わない様にしようと、ゾロは誓った。
 折角のバカンスはセックスだけで終わってしまいそうだ。きっとサンジは後で文句を言うだろう。
 それでも今は、触れあっているという現実を感じていたい。
 そう思うのだった。
*8/18ドラム島直後*
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